「私は相続放棄しましたので父の借金は私には全く関係ありません」
この様におっしゃる方がいたとします。
さて、これに対する私の回答が、
「あ、相続放棄したんですね。じゃあ大丈夫ですね!」
・・・となるかというと、さにあらず。
私(やその他の弁護士)がいう「相続放棄」と
皆さんがおっしゃる「相続放棄」とは、ほとんどの場合違うものなのです。
私(やその他の弁護士)がいう「相続放棄」とは、
民法938条以下に定められたものであり、
家庭裁判所にその旨を届け出る(正確には「申述」するといいます)ことが必要なのです。
そして、そうしておけば、その人は、
「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみな」されるのです(同939条)。
これは要するに、相続人でなくなる、
即ち、赤の他人と同じ立場になるのだから当然に何も引き継がない、ということです。
「相続放棄しました」の意味合いがこの様なものであれば、
お父さんの借金はその方には無関係となり、
私の回答も、「大丈夫です。確かに支払う必要はありませんね」となります。
しかし、「相続放棄しました」の意味合いがこの様なものではなく、
単に、「何ももらっていない」ということであれば、
お父さんの借金は引き継いでしまっています。
相続人である以上一切の権利のみならず一切の義務も承継しているのであって(同896条)、
「何ももらっていない」、即ち、一切の権利を引き継いでいなくても、
一切の義務は引き継いでしまっているのです。
この場合、打つ手があるのかないのか。弁護士さんに相談してみて下さい。
(石原)